横瀧です。先日、ローンチしたばかりのゲームが初日から失敗していました。
なにかというと、サービス開始日になっても、サーバーが不安定でサービス提供できず、数日間(今もですが)断続的なメンテナンスが頻発しています。ビジネスの基本中の基本である、商品、サービスを届けるということができないというのは、致命的な失敗だと言えます。
開発会社は、そのタイトルに数回のクローズトベータテスト含め2年以上の開発期間と、15億円以上の開発費を投入しているようでした。キャラクターデザイン、テーマソングにも日本の著名なクリエイターを起用し、超大型国産MMORPGと銘打った社運をかけたプロジェクトでした。しかし、サービス開始日になっても、サービスは始まらず、開発期間が伸びたことで、日進月歩のゲームカテゴリで、システムやデザインが時代遅れになっていました。僕はこの事態を傍観しながら、「失敗の本質」を思い出しました。
「失敗の本質」とは、第二次世界大戦で敗戦した大日本帝国について考察した本です。大日本帝国は、太平洋戦争でいかにして敗北を喫したのか?日本人的な気質・組織性にどのような原因があったのかを分析・解説しています。この本は現代社会の組織論、戦略論に通じる名著です。さきほどの某ゲーム会社の失敗も、事例に加えてもいいのではと思いました。
「失敗」には、組織としての失敗と、戦略としての失敗があるように思えます。
「戦略」とは勝つための指標を探すことであり、「追いかける指標」であると定義されます。その上で具体的にどう闘うべきか、それが戦術です。
日米戦における日本は、戦略が曖昧で、目標につながらない無駄な勝利を積み重ねたのに対して、アメリカは、戦略を明確にし、目標に繋がる勝利だけを追い求めてきたところに、明暗が分かれたとされています。
戦略がズレることで生じる誤りは、数cm飛行機の機首がズレただけで、墜落事故を起こすのと同じぐらい致命的なものです。
日本人はこの戦略立案が苦手とされています。新たな戦略を生み出すより、決められた戦略の中で、鍛錬を重ねて競争に勝利していくことが得意と言えます。
たとえば、太平洋戦争でもその気質は顕著で、日本空軍の「月月火水木金金」の鍛錬で鍛え上げられた精神力と技術力は、目視で8キロも先の軍艦を識別できるほどで、アメリカの驚異となり、零戦の日本空軍は躍進しました。当初、日本の職人芸に押されていた米軍ですが、そのうち新たな指標を見つけて対応します。
アメリカは、システムという指標で対応します。機体に直接当たらなくても爆発し撃墜できる兵器を科学者と共同で開発し、目視の戦いでは到底勝てないので、レーダーを開発し索敵を優位に展開しました。日本の零戦とは、1対1の戦いでは勝てないので、単独行動を禁じた上で、2機1組の体制とし、重装備を施した1機が標的にされている間にもう1機が攻撃する挟み撃ちルールを導入。このような日本軍の熟練された職人技に対して、システムを取り入れ、日本人の指標を無効にすることに成功します。
このような思考の違いは、シングルループ学習とダブルループ学習の違いと言われています。シングルループとは、トップダウン方式で一方通行の学習しか行わない。ダブルループ学習は、双方向の学習です。トップダウンではなく、現場と管理者双方向からのフィードバックを生かすやり方です。
このような優位な戦略を立案、実行するには、相応の「組織」が必要になります。
シングルループの一方通行の組織とは、上層部が、自分たちの理解していない現場を軽視している傲慢さと権威主義が横行している組織。上層部が現場の優秀な人間の意見を参照しない、現場フィードバックを無視する一方通行の組織と言えます。まるで、「踊る大捜査線」ですね・・・。一方、ダブルループの組織とは、アメリカドラマによくあるようなFBIやCSIものといえばわかりやすいですね。現場と上層部が妙に嚙み合っているやつです(笑
この「組織」の失敗は、戦略の曖昧さを生み、責任の曖昧さを生みます。それがそのまま現場の間違った戦術や、責任感のない行動へとつながります。
話を某ゲーム会社にもどすと、開発期間も、開発資金も相応にかけた作品なので、リリースをしなければならないという、まるで、孤軍奮闘特攻で撃沈していった戦艦大和のようです。作戦的には絶望的なのにもかかわらず、遂行しなければという組織空気があったように思われます。
当時の日本軍とおなじように、このゲーム会社も、リスクを適正に判断、事業を評価できない集団浅慮(グループシンク)に陥っていたのではないでしょうか。開発期間も莫大な開発費もかけ、著名人や様々な関係者の利害がからみ、リリースまでの時間がない。「時間的要因」「専門家の存在」「利害関係」、集団浅慮(グループシンク)が発生する典型的なパターンをみました。たぶんアメリカの会社であれば、リリースを凍結して、再開発していたのではないでしょうか。
「組織」の失敗は、「戦略」の失敗を生み、作戦、プロジェクトの失敗へとつながります。
では、失敗の本質とは何でしょう。名著「失敗の本質」では、日本人の気質や組織論について書かれています。ただ、僕は日本人の気質は変わらないという前提で、考えないと本質はみえてこないと思います。島国ニッポンは、単一王朝として数千年におよび世界最長で、単一民族であり、多様性には欠けます。そもそも競争原理は働きにくい風土で、お上のいうことを実直にそれこそ「月月火水木金金」でやり抜けば生きていけました。そういった風土、社会であると認識しないで、戦うフィールドを間違えると「失敗」するのではないでしょうか。
「失敗の本質」とは、見極めることだと僕は思います。
このゲーム会社しかり、日本のお役所しかり、僕たち日本人の気質や、組織体質は、変わらないという前提で、仕組みをつくり、戦うフィールドを見極める必要があります。ちょっと楽しみにしていたゲームだけだっただけに、残念ですが、少しばかり学びのあった出来事でした。


